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復讐のスパイラル ISの目的はヨーロッパの怒りを罪のないイスラム教徒の人々に向けること Koston kierre: Isisin tavoitteena on suunnata Euroopan viha viattomia muslimeita kohtaan

著者 author:
ヤーッコ・ハメーン=アンッティラ Jaakko Hämeen-Anttila
(フィンランド ヘルシンキ大学・文学部・世界文化学科 教授, アラビア語・イスラム研究)
出典 reference:
『アームレヘティ』誌,2015年11月15日号 Aamulehti, 15. marraskuuta 2015
訳 translator:
千葉庄寿 Shoju CHIBA

はじめに

パリで発生したテロ後まもない11月15日,フィンランドの日刊紙 Aamulehti の1ページ目 (表紙ページに記事が載ること自体異例です) に掲載された,イスラム研究を専門とするハメーン=アンッティラ教授の論説記事の全文の拙訳です。オリジナルはフィンランド語ですが,「非公式」の日本語訳として公開し,共有したいと思います。

訳出と公開においてはハメーン=アンッティラ教授の許可を得ていますが,あくまでも「非公式」のものですので,読み間違いなどがあるかもしれない旨,ご了承ください。コメントなどありましたら,千葉 までお願いします。

オリジナルの記事は AamulehtiFacebookタイムライン上で画像として,またAamulehti電子版 näköislehti のデモ として読むことができます(2015年11月16日現在)。大きな反響があったようで,読者の反応についての解説つきで原文が別ページに再掲されています

[2015-11-16, 2016-04-29 更新]

Aamulehti が記事を英語の解説つきで Web上に再掲しました。フィンランド語の原文のほか,英語,フランス語,アラビア語でも読めます。

[2015-11-20, 2016-04-29 更新]

Aamulehti Web版で本ページが紹介されています。

[2015-11-24, 2016-04-29 更新]

復讐のスパイラル ISの目的はヨーロッパの怒りを罪のないイスラム教徒の人々に向けること

9.11は発生から14年が経過した今でもその影を落としている。13日の金曜日はヨーロッパにとって同じような分水嶺となるのだろうか?そうはならないことを願う。我々の世界はさらなる不信や安全チェックを求めてはいないし,さらなるコントロールを欲しているわけでもない。警戒を強化することを急ぐ代わりに,我々は今,現在の状況とその背景を分析する必要がある。金曜日のテロで問題にすべきなのは何か?

ISは昨夏シリアにおいて勢いを得たが,その牽引力は落ち始めている。未だ今秋初めの段階で多くの過激なイスラム教徒たち―イスラム教徒のうちの小さなマイノリティ―はISの支配地域について,カリフが治めるイスラム主義国家の新たな始まりと捉えてはいる。処刑ビデオを交えたISのメディア術は,西側諸国が中心となっている世界情勢に対するオープンな挑戦状である。その地域からはしかし,そこでの生活がそれほどイスラム主義的で幸せではないことを示す情報が漏れ始めている。同時にISはシリアにおいて軍事的な敗北で痛手を受けている。「何かをすべき」だったのである。

パリの攻撃は状況を逆転させようとする試みだ。それらの攻撃がイスラム教徒の人々に対して強い反応を引き起こせば引き起こすほど,ISにとってはよいことなのである。テロリストたちの目的は罪のないフランスの犠牲者の人々を使い,フランスと他のヨーロッパの国々の怒りが罪のないイスラム教徒の移民の人々や中東の住人に向くようにし,復讐のスパイラルが起こるようにすることである。

では,テロリストたちは何者なのか?ISの支持者と自らを認ずる行為者によるイスラム過激派テロかもしれない,ということ以上のことを言うことはまだ困難である。殆どのイスラム教徒にとって,ISは意味の無い脅威をもたらすものであり,その脅威は彼らが送っている普通のイスラム教の日常生活とは全く異質なものである。世界にいる20億人弱のイスラム教徒のうち,パリの攻撃に参加したのは8人であり,彼らの背景となっているグループには恐らく他に十数人が所属していると思われる。そして彼らはまもなくフランスの警察により裁かれることになる(そう祈るばかりである)。

テロリストたちの攻撃は許しがたいものである。もし彼らが生きているならば,どんな重い判決も彼らには充分ではないであろう。一方で,難民や移民,またイスラム教徒の人々は何らの罪も背負うことはない。かつてフィンランドのミュールマキ(Myyrmäki)で爆弾が爆発した時,我々はそれに対して全てのフィンランド人を有罪とはしなかったではないか。

テロリズムがとりわけ怒りの矛先を向けるのは,おそらく自由で恐れを知らない社会である。テロと戦う最善の方法は,安全の名の下に無実の人々を監視する警察大国を創ることではない。実際,テロリズムと戦う唯一の方法は,それに対する支持をしないことである。過激派が,組織だった社会を敵とみなすような新しい支持者を得ることなしに成功することは不可能である。

ヨーロッパによりよい社会を創り,中東の社会の問題点をさらに解決していくことで,我々はヨーロッパで(そしてフィンランドでも)より安心感をもって生きることができるのである。

更新履歴

2015-11-16
バージョン1を公開。
2015-11-20
オリジナル記事の URL を追加。* URL 修正 [2016-04-29]